三丁目の決断
人物
高橋修二(30)工員
◯商店街
バラック調で不衛生な佇まいの建物が連なっている。
道は未舗装で、オート三輪が通るたびに砂埃がたつ。
昼のサイレンがなっている。
草履をずって歩いている高橋修二(30)。
ヨレヨレのシャツに機械油で汚れたズボンを履いている。
高橋、横を向いて立ち止まる。
◯商店街・民家前
トタンと木材でできた粗末な建物。窓が開いている。
裸電球が一つぶら下がっていて、ボロボロの畳敷き。継ぎ接ぎだらけの襖。
ちゃぶ台を囲んで、一つの鍋からラーメンを分け合っている父親、母親そして兄妹。
父親、窓の外を見て、ニコリと微笑む。
◯商店街
高橋、会釈をして、歩き出す。
高橋、空を見上げて、軽く頷く。
◯商店街・元中華店前
中華店風の佇まい。店名は削り取られている。窓にはホコリや水垢で曇っている。
高橋、立ち止まり、店の方を見る。
◯元中華店・中
すみの方に荷物や不要物等が置かれていている。
壁には「たんじょうびおめでとう」の文字。
真ん中の丸テーブルに父親と祖父、祖母、子供兄妹が座っている。
奥から母親がロウソクを一本立てた大盛りのチキンライスをテーブルへ運んでくる。
娘に拍手する家族。照れながらロウソクを吹き消す娘。
◯商店街・元中華店前
高橋、上を見上げて目をつむり、軽く頷く。
◯商店街
前方には太鼓櫓が見える。
高橋、歩きながら腕を組み口元がほころびる。
開襟シャツのサラリーマンが口に用事を咥えてすれ違う。
◯商店街・定食屋前
特に極まるみすぼらしい構え。
高橋、土埃を被ったショーケースのサンプルメニューをじっと見ている。
高橋、ズボンポケットに手を突っ込んでモゾモゾする。
ポケットから出した、握りこぶしを広げる。
手には十円玉三枚。
高橋、サンプルメニューを覗く。
素ラーメン、二十五円。チキンライス二十円とある。
高橋、空を見上げ目を閉じる。
高橋、軽く頷く。
「完」