タイトル「非常口」
人 物
山内武流(35)無職
大木由美(30)武流の仲間
大木理久(5)由美の息子
鬼の声(50)
第二幕
◯雑居ビル・一室(夜)
廃墟と化している。
壁には弾痕があり、「ソーシャル・ディスタンス」のステッカーが貼られてある。
中央には焚き火が焚かれていて、そこに並んで座っている山内武流(35)と大木由美
(30)。
山内と由美、ボロボロな服を着ていて、口にはボロ布マスクをしている。
由美、目で肉を指しながら
由美「もういいと思います、肉」
山内、あっとしてから、肉の柄を持ち鼻に持っていく。
焼き加減や匂いを味わってから
山内「こんな極上もんを食えるなんて、超ラッキーだよ。生きててよかったー!」
由美、焚き火を見つめている。
山内、肉を掲げて
山内「大木さん!大木様!いや、女神様!」
と笑う。
由美、焚き火をじっと見つめている。
山内、焚き火のそばにあるもう一つの肉を由美に差し出して
山内「助けてくれてありがとう。君がいなかったら俺は今頃・・・」
由美、目を瞑り、祈りを捧げ始める。
山内、とっさに由美の真似をする。
由美「(小声で)いただきます」
山内、チラチラ横目で由美を見ながら
山内「(小声で)いただきます」
由美、山内の手から肉を抜き取り、マスクをずらして肉にかじりつく。
由美をキョトンと見ている山内、頭を小ぶり、マスクをずらして肉にかぶりつく。
山内と由美の影が壁から天井に揺らいでいる。まるで鬼の様。
続く