遠江伝承文芸映像詩

半農半術で創造的に生きていく諸術探究編

非常口 第三幕

タイトル「非常口」

 

人 物

山内武流(35)無職

大木由美(30)武流の仲間

大木理久(5)由美の息子

鬼の声(50)

 

 

第三幕

 

◯雑居ビル・一室(夜)

   廃墟と化している。

   壁には弾痕があり、「ソーシャル・ディスタンス」のステッカーが貼られてある。

   中央には焚き火が焚かれていて、そこに並んで座っている山内武流(35)と大木由美

   (30)。

   山内と由美、ボロボロな服を着ていて、ボロ布マスクをずらして肉をほうばっている。

   焚き火がメラメラと明るい。

   肉にかぶりついている山内。

   山内の口が止まる。

 

◯同・廊下(夜)

   薄暗く、非常灯が不規則に点滅している。

   扉はなく、奥は暗闇。

 

◯同・一室(夜)

   山内、再開するも再び動きが止まる。

   山内、前方をゆっくりみる。

 

◯同・廊下(夜)

   薄暗く、非常灯が不規則に点滅している。

   扉はなく、奥は暗闇。

 

◯同・一室(夜)

   山内、前方をじっと見たまま、肉にかぶりついている口をもぐもぐと動かしている。

   焚き火が音を立てる。

   壁から天井に映った山内と由美の影が鬼の様。

   山内、ピクッとして、部屋を見回してから

山内「なあ、この建物に俺たちの他に誰かいるのか?」

   由美、焚き火を見つめながら肉を食べている。

   由美の様子を見ている山内、首を傾げて再び肉を食べようとするも固まる。

   山内の目が大きく開き、ゆっくり背後を振り向く。

   入り口あたりはほのかに明るい。

   山内、入り口を向いたままゆっくり立ち上がる。

由美「(ぼそっと)肉は置いてったら?!」

   山内、頷いて足元をキョロキョロ見まわしてから由美に肉を差し出す。

   由美、焚き火を見つめたまま肉を受け取る。

   山内、入り口の方へ向かう。

   由美、受け取った肉をボーッと眺めている。

   焚き火の炭が音をたてて崩れる。

 

続く

 

 

 

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