中学2年の文化祭は「宇宙」をテーマにした催しをすることになった。
「宇宙」と聞いて、アイデアも宇宙旅行やエイリアンなど無限の可能性を秘めたものが湧いて
きそうだった。しかし、文化祭が迫ってくるとみんな妄想が冷めてきて現実を見るようにな
る。
次第に「宇宙旅行って言ったってどうやってやるんだ?ムリ・ムリ・ムリ・ムリ!」
「エイリアン?そもそも奴ってどんな格好なの?俺全体像見たことねー。ムリ・ムリ・ムリ・
ムリ!」なんてぼやき始めるものが出てくる。
そもそも学校の小予算内で、しかも授業と部活と遊びで多忙なド素人の中学生なんかに片手間
で制作することはほぼ不可能である。テーマが広すぎてわかんねーっていう逆ギレものまで出
る始末。
結局、各クラスの出し物は似たり寄ったりな小学生の図工に毛が生えたような締まりのないも
のになっていた。段ボールに色紙をペタペタ貼っただけのスペースシャトルに誰が胸踊るの
か。
出し物と一緒にビデオを流す案が出たので、当日「宇宙」に関するビデオを持っていって弁当
の時間に流した。
みんなの箸は止まり顔はテレビ画面を向いていた。ビデオが終わるとみんな何かを誤魔化すよ
うなヘラヘラした顔で弁当を仕舞いはじめた。
そのビデオが「遊星からの物体X」である。
越冬隊員のいる南極基地に”ニセモノ”の犬が入り込む。その”ニセモノ”は同化することができる。知らず知らずのうちに隊員たちも次第に”ニセモノ”になっていく。
ーー誰が人間で誰が”ニセモノ”なのか!?自分は人間か?ーー
隊員たちは疑心暗鬼になって極限状況に追い込まれるという映画。
SFXがずば抜けて素晴らしく、今見ても十分通用するほどのA級である。
後日、クラスの女子にビデオの感想を聞いたら、どうもそれを流したのはクラスの他の男子だ
と勘違いされていて、そいつを恨んでいた。
ヘラヘラはトラウマ超えの表情だったらしい。