小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の代表作「怪談」の短編集の中に、「鏡と鐘」がある。
この話、粟ケ岳のことだということはご存知だろうか。
遠州の七不思議の「無間の鐘」の話である。しかし内容は違う。
「鏡と鐘」あらすじ
無間山(粟ケ岳)にある寺の住職が周辺から古い鏡(青銅)を集めて釣鐘を作ろうとした。
その時、鏡の一つにどうしても溶けない鏡があった。持ち主は手放す念ができずにいたからだ。それを知った持ち主は身を投げた。ただそこに置きがきを残していた。
「釣鐘をついて割った者は金銀財宝が授かる」と。
それを知った者は我先にと鐘をつきまくった。
たまりかねた寺の住職は釣鐘を麓の沼地まで落としてしまった。。。
続きはあるが、無間山のメイン話はこの辺りまで。
無間山(粟ケ岳)の寺とは最近まであった観音寺と推測できる。
弘法大師が開山したと伝えられていて、しばらくは住職がいたようであるが、ここ数百年間は無人寺であったらしい。
今は麓から車でも行ける道路が整備されているが、何百年も前のこの土地は人の獣道ほどの険しい道しかなかっただろう。
残念ながら去年あたりにこの寺は撤去されてしまった。中の物は麓の寺へ納められた。
「怪談」ゆかりの建物として、残すことはできなかったのであろうか。
観光を促す行政や民間は、トレンドに目を向けがちであるが、こういう時代だからこそ改めて古の文化や遺産を磨き直してみてはいかがだろうか。